クリアカード編の感想書くつもりがツバサ考察になった
- 私がCLAMP作品にハマったきっかけ
- CLAMP作品はマルチバース
- クロウ・リードがいない世界にはさくらも存在しない
- 輪の中で繰り返す世界
- クロウ・リードとさくらはバグみたいな存在
- 飛王の正体はクロウ・リードの負の側面
- 飛王とクロウ・リードの願い
- 物語は進む
私がCLAMP作品にハマったきっかけ
それは「カードキャプターさくら」でした。
小学生の頃、本屋でこの本の一巻を手に取った時、一緒にいた幼馴染が二巻を買ってくれて、二人で回し読みしました。
以来、二人でCLAMP作品を集めるようになり、それらは共有物としてお互いの本棚をしょちゅう行き来していました。
その幼馴染とは大人になった今でも親しい付き合いですが、居住が離れてしまったために本の貸し借りはできなくなり、長らくCLAMP作品への関心も薄らいでいました。
しかしツイッターでクリアカード編の完結を知り、電子書籍で一気に読みました。
そうして私の中に沸き上がった色々な何かを文章化して消化したいと思います。
CLAMP作品はマルチバース
「ツバサ」でサクラ姫達は様々な世界で見知った人物と何度も再会しますが、彼らはその世界の彼らであって、同じ存在でありながら別人です。
この概念は「ツバサ」に留まらず、他のCLAMP作品にも当てはまります。
「ちょびっツ」に登場するアパートの管理人の日比谷千歳は後の「こばと。」にも登場しますが、苗字が日比谷ではなく三原になっています。
なぜなら千歳の夫、三原一郎は「ちょびっツ」では故人でしたが、「こばと。」では存命だからです。
これは時系列が逆という訳ではなく、「ちょびっツ」で人型パソコンが造られた経緯に千歳が子どもを産めない為でしたが、「こばと。」ではちぃ達そっくりな娘がいます。
ちなみに三原一郎は「ANGELIC LAYER」が初出のキャラクターでもあります。いっちゃんにょろよ~!!
このように、同じ人物に見えても同一人物とは言えないのがCLAMP作品。
そしてこれは漫画とアニメでさえ起こります。
「ANGELIC LAYER」で、漫画では小林虎太郎が付き合うのは主人公の鈴原みさきですが、アニメでは幼馴染の木崎珠代を選びます。
唐突なNTRにより脳が破壊された人がどれほどいた事でしょうか。
これは、アニメは単に漫画を映像化したものではなく、それぞれをパラレルワールドとして見るべきなのだと今では納得していますが、もう一度見たらやっぱり憤死するかもしれません。
他にも「カードキャプターさくら」で漫画ではクロウカードは全部で19枚でしたがアニメでは53枚と、看過できない違いが見られます。
クロウ・リードがいない世界にはさくらも存在しない
「カードキャプターさくら」が初出であるクロウ・リードは「ツバサ」にも登場しますが、先に挙げたような同じ人物に見える別人ではなく、本当に同一人物です。
飛王が理を破壊したため、玖楼国の王ではなくなった藤隆の代わりにクロウ・リードがその役目を担ったのでした。
「カードキャプターさくら」では木之本藤隆はクロウ・リードが転生した、二人のうちの一人です。
なので小狼と四月一日君尋のように、別人であっても魂が同じという事で肩代わりできたのでしょう。
しかし、そもそも玖楼国のある世界にクロウ・リードは存在しないのでしょうか。
おそらく、いません。
クロウ・リードは「カードキャプターさくら」と地続きの関係である「XXXHOLiC」と、「ツバサ」の写身二人が転生した「カードキャプターさくら」にならなかった世界にのみ存在するようです。
「カードキャプターさくら」にならなかった世界というのは、李小狼と木之本桜の出会いが小学生ではなく高校生であるのと、別世界(クリアカード編後)の木之本桜から星の杖を譲り受けるため。
「ツバサ」で様々な世界を渡りましたが、その中で小狼達一行のそっくりさんと出会う事はありませんでした。
クロウ・リードがいなくても藤隆が生まれ、撫子と出会い、桃矢を生むのは決まっているが、クロウ・リードがいなければその世界にさくらは生まれず、クロウ・リードの血筋である李家も生まれないと考えられます。
輪の中で繰り返す世界
先程、クロウ・リードがいない世界にはさくらも存在しないと言いましたが、クロウ・リードが藤隆に代わって玖楼国の王になるより前に、サクラ姫は存在していました。
これについても説明できます。
「カードキャプターさくら」にならなかった世界で、小狼の写身の転生である李小狼と、サクラ姫の写身の転生である木之本桜の間に生まれた小狼は、次元を渡ってサクラ姫に出会います。
飛王の策略で時が巻き戻った結果、関係性が崩れて藤隆が玖楼国の王ではなくなり、小狼とサクラ姫は飛王の作った写身にすり替えられます。
そして「ツバサ」本編が始まり、写身二人は転生して「カードキャプターさくら」にならなかった世界で小狼を生み、玖楼国へ行って、時が巻き戻る。
つまりこの世界は既にループしていて、クロウ・リードが関わる事は決まった運命なのでサクラ姫は存在できるという訳です。
となると、このループの一周目はどうだったのか?
小狼が存在するのは小狼の写身がいるからで、因果関係が循環していて一周目を観測する術はありません。
ただループを繰り返しているというよりは、因果が捻じれて滅茶苦茶になっているというのが正しいようです。
ともかくループの果てに写身の二人は李家にあったガラスの中で時が来るのを待ち、4人揃って飛王の持つもうひとつのガラスを破ってループからも抜け出します。
飛王を倒した事で、サクラ姫が死の刻印を受ける因果もなくなったわけです。
クロウ・リードとさくらはバグみたいな存在
クロウ・リードは壱原侑子の死を悲しみ、ただの一瞬だけ「もう一度目を開けて欲しい」と望んでしまったために、切り取られて静止した時間の中で侑子は存在し続けました。
クリアカード編のさくらも思ったものを無意識にクリアカードとして創り出してしまいます。
彼らは高すぎる魔力のために、理を壊しかねないバランスブレイカーなのです。
さくらと同じ魂を持つサクラ姫もその可能性を有しています。
そのため飛王はサクラ姫に手を加えて写身を作り、その魂は羽根となって様々な世界へと飛び散りました。
羽根は一枚一枚に強い魔力を持っていて、さらに時間が経つほど魔力が強まる性質があるようです。
クリアカード編で、木之本藤隆に魔力はないが、容量はむしろ大きい事が明かされました。
つまり、人の体では魔力を蓄える限界がある。
玖楼国の過去に位置する砂の国に残された羽根は、その一枚ですらとてつもない魔力を有していました。
仮に人の一生分よりも長い年月が経っているとしたら、クロウ・リードを遥かに超える程の魔力に達していてもおかしくありません。
しかし、その魔力を以ってしても死者を生き返らせる事は叶いませんでした。
飛王の正体はクロウ・リードの負の側面
黒鋼に切られた飛王はガラスのように砕けました。
写身の小狼がそうであったように、最終話のファイの発言で飛王も写身だった事が分かります。
「ひと、というより、強い概念
強い魔力を持った誰かの願いの残像だったのかも」
私は飛王の正体とはクロウ・リードの闇の部分が具現化したものだったと考えます。
「カードキャプターさくら」に話を戻します。
最後の審判でユエに敗れ、試練を達成できなかった場合、クロウカードとその所有者に関わった全ての人達にとって一番好きな人への想いが失われてしまいます。
クロウ・リードと並ぶ魔力の持ち主がいずれ同じように、愛する者の死を受け入れられず、ほんの一瞬でも望んではならない事を望んでしまうかもしれない。
なのでクロウ・リードは転生後の魂を二つに分ける事で魔力を分割しようとし、クロウカードの後継者には試練を課したのです。
この試練はいわゆるセーフティ・ロックですが、クロウ・リードが望んでいた事とは、災いという安全装置が無事に作動する事ではありません。
クロウ・リードが真に望んだのは、セーフティ・ロックを解除して引き金を引く者が現れること。
つまり、さくらにクロウ・リードを超える魔術師になってもらう事でした。
対して飛王は自身がクロウ・リードを超える事に執念を燃やし、サクラ姫を利用しました。
一歩間違えればクロウ・リードも同じ事をしたかもしれない。
「ツバサ」はまさしく「カードキャプターさくら」にならなかった世界なのです。
飛王とクロウ・リードの願い
実際のクロウ・リードはさくらが魔力を正しく扱えるよう導いていました。
変人で陰険メガネと評される人物であれど、悪人だとは思えません。
飛王はもしもクロウ・リードに道義心がなく、目的遂行の為に冷徹な人物だった場合の姿です。
勿論それはクロウ・リードとは呼べぬ存在ですが、飛王が取った行動は、実行する気はなくてもクロウ・リードの脳裏にほんの一瞬よぎったのかもしれません。
飛王は消滅する直前に意味深な言葉を遺します。
「魔女は‥生き返る‥‥
その為に私は存在するのだから‥‥
そして‥‥伝えねばならない事が‥‥
私は‥‥その為に‥
私 は‥
を‥‥」
非道な手段を取って飛王が侑子に伝えたかった事とは。
彼の根源がクロウ・リードだったなら、それはやはり、侑子への想いではないでしょうか。
クリアカード編に詩之本秋穂というさくらによく似たキャラクターが登場します。
さくらは秋穂の無くしたくないもの=一番大切なひとを取り戻すために、自分にとって一番大切なひとである、小狼と共に行きます。
一番だと言われてはにかむ小狼にさくらはこう言います。
「今の世界が『書き換えられている』って分かって、思ったの
伝えたい事はちゃんと伝えようって
大切な言葉はもし『書き換え』られても『無かった』事にはならない
きっと心に『残る』から」
物語は進む
ユナ・D・海渡は時間を戻す魔法を何度も使ってさくら達の行動をコントロールし、ある望みを叶えようとしていました。
海渡もまた、彼にとって大切なひとである秋穂を救い出す為に奮闘していたのでした。
幾つかの点で、飛王と似通った面があります。
ただし海渡は自らの身命と存在までも犠牲にしている点が大きな違いと言えます。
海渡は魔力の回復が間に合わない程に時の魔法を酷使し、そのうえ禁忌の魔法を使いました。
彼が最高位の魔術師といえど、下手をすれば絶命していたかもしれません。
それでも持ちこたえているのは、海渡が時の魔法を使うための懐中時計をさくらが間接的に使用した際に、壊れかけの状態から戻り、かつ『止まって』いたお陰で海渡の時間も止まっているそう。
かつての侑子の状態に近いのだと思います。
エリオルが秋穂のこれから選ぶ事、やりたい事を全てサポートすると言ったのは、前世の記憶から思うところがあるのでしょうか。
さくらの最後の魔法も禁忌の魔法と同質ですが、数日眠れば復活するのは規格外と言わざるを得ません。
ぶっちゃけ、さくらに頼ればなんとかなる気がしますが、実際のところ秋穂と海渡にとって大事なのはこれから過ごす時間だと思うので、治せるかどうかは些末な事なのかもしれません。
彼らについての今後のエピソードもまたCLAMP先生の別作品で垣間見える事でしょう。